ふくの本場として全国に知られるようになったのは、まず好漁場に近いこと、次に1888(明治21)年に全国に先駆けて山口県でフグが解禁されたことも理由に挙げられます。
「大陸への窓口」として栄えた下関には政財界人などが数多く訪れ、フグ料理を堪能した彼らを通じて、評判は全国へ広まり、同時に、素早く安全に「身欠き」にする技や料理の技が磨かれていきました。
そうした歴史があり、生きのいいふくが手に入る下関には、だからこそ生まれた伝統的な料理の技があります。
それがふく刺しの二枚引きです。
ふくの身には弾力があり、厚い刺し身にすると、かみ切りにくいため、薄く引きます。
しかし、新鮮なふくは水分が多いため、朝、身欠きにしても夕方までに身が十分締まらず、薄く引けません。
そこで少し厚めに引いた身に、さらに包丁を入れて観音開きにする高度な技、二枚引きが生まれました。
二枚引きは一度で引く一枚引きより薄く、幅が広く、その繊細な味にポン酢しょうゆがほどよく絡んで、うまみが倍加すると言われ、美食家の北大路魯山人(きたおおじ ろさんじん)も絶賛しています。
現在は下関でも一枚引きが主流です。身欠きふくを下関から送ると、東京に着いたころほどよく身が締まり、一度で薄く引けたことから、下関でも一日熟成させて一枚引きにするようになったといいます。
熟成させたふくには独特のうまみが生まれますが、大きさや時期などによってどの程度熟成させ、どう料理すれば旨味を最も引き出せるかは異なります。
それを見極めるのが、料理人の腕の見せどころなのです。下関の料理人はふくの全てを知り尽くし、最高のふく料理を提供すべく、代々その匠の技の伝承に努めています。
特にふくの調理達人・・・西山正巳名人の技を引き継ぐべく日夜研鑽に励んでいます。
※身欠きとは
毒を持つ内臓などを取り除いた状態にしたものです。
ふく料理の達人・・西山正巳氏のとらふく二枚引きの技
孔雀盛です。
この西山名人の師匠が平尾雅雄氏で、魯山人も絶賛!!
『美食倶楽部』や『星岡茶寮』を主幹し、美食家として名
を馳せていた北大路魯山人の発行した個人誌「星岡」の
中で、『河豚にうまいまずいが色々あるが、下関の河豚の
上等品のうまさは実に断然たるものだ』と言っています。
ふく百華より
是非、下関で本場のとらふく料理をご賞味ください。